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シリーズ「片頭痛を知る」

片頭痛は「頭痛」から始まるのではない

シリーズ『片頭痛を知る』 第1話

片頭痛は「頭痛」から
始まるのではない

発作はすでに
1~2日前から始まっている

【監修】氷室クリニック院長・氷室公秀(医学博士・神経内科専門医)

「片頭痛は、突然頭が痛くなる病気」

多くの人は、そう思っているでしょう。

しかし実際には、
「頭が痛くなった時」に片頭痛発作が始まるわけではありません。

多くの場合、発作はすでに数時間前、
時には1〜2日前から静かに始まっています。

頭痛として自覚される頃には、
脳の中ではすでにさまざまな変化が進行しているのです。

医学的には、片頭痛発作は
次の4つの段階に分けて考えると理解しやすくなります。

前駆症状(prodrome/予兆期)
 ↓
前兆(aura)
 ↓
頭痛期
 ↓
ポストドローム(postdrome/回復期)

この「時間の流れ」を意識できるかどうかは、
片頭痛への対処や治療の質に大きく関わってきます。

すでに脳は発作の準備を始めている

前駆症状とは、頭痛が始まる数時間から、
長い場合では1〜2日前に現れる体調や気分の変化を指します。

多くの患者さまはこれを
「なんとなく体調が悪い」
「疲れているだけ」
と感じて見過ごしてしまいます。

しかしこの段階で、脳の中ではすでに
片頭痛発作に向かう変化が始まっている
と考えられています。

よく見られる前駆症状には、次のようなものがあります。
思い当たる節があるのではないでしょうか。

 ✅倦怠感、理由のない疲労感

 ✅あくびが増える

 ✅食欲の変化(甘い物が無性に食べたくなるなど)

 ✅気分の変化(イライラ、気分の落ち込み、集中しづらい)

 ✅頻尿や体のむくみ

 ✅光や音への過敏さの軽い増加

 ✅首や肩のこり、違和感

興味深いのは、これらの症状の
組み合わせが患者ごとに比較的一定している
ことです。

経験のある患者さまは、よくおっしゃいます。

「そろそろ来そうだ」

この感覚は、単なる直感ではありません。

これまでの経験の中で、
自分の前駆症状のパターンを
無意識に学習している結果と考えられます。

一時的な神経症状として現れるサイン

前兆(aura)は、
頭痛の直前あるいは直後に現れる
一時的な神経症状です。

通常は5〜60分ほど続き、
その後自然に消えていきます。

ただし、すべての方に
前兆があるわけではありません。
前兆を経験するのは、片頭痛患者の一部です。

代表的な前兆には次のようなものがあります。

視覚症状

 ✅ギザギザした光が広がる(閃輝暗点)

 ✅視野の一部が見えにくくなる

 ✅物が歪んで見える

感覚症状

 ✅手や口の周りのしびれ

 ✅チクチクする感覚(多くは体の片側)

言語症状

 ✅言葉が出にくくなる

 ✅言い間違えが増える

その他

 ✅片側の脱力感

 ✅めまい、ふらつき(前庭性片頭痛)

これらの症状は通常一過性で可逆的です。
つまり、脳の組織が壊れているわけではなく、
一時的な機能の変化として起こっています。

この点は、片頭痛が「脳の構造の破壊」ではなく、
脳の働きの変化によって起こる疾患
であることを示す重要な特徴です。

みなさんが「発作」と感じる段階

頭痛期は、患者さまが
「片頭痛が始まった」
と認識する段階です。

典型的には
中等度から重度の拍動性頭痛が現れ、
4〜72時間続くことがあります。

この時期には、三叉神経頸髄複合体(TCC)
と呼ばれる神経回路が活性化し、
痛みの性質は時間とともに変化していきます。

初期には、眼の奥やこめかみを中心に、
ズキズキと脈打つような痛みが現れることが多く、
体を動かすと悪化します。

時間が経つにつれて痛みの性質は変化し、

 ✅焼けるような痛み

 ✅刺すような痛み

 ✅頭全体が締め付けられる感覚

といった形になることもあります。
また、次のような症状を伴うことが多いのも片頭痛の特徴です。

 ✅吐き気や嘔吐

 ✅光への過敏(まぶしさ)

 ✅音や匂いへの過敏

急性期治療薬(トリプタンなど)は、
頭痛が始まって早い段階で使用するほど効果が高い
とされています。

症例によっては、
前兆や前駆症状の段階で治療を開始することで
発作を軽くできることもあります。

痛みが消えても、発作は完全には終わっていない

頭痛が治まったあとにも、
数時間から数日続く回復期が存在します。

これがポストドロームです。

この時期には次のような症状がみられます。

 ✅頭の重さや違和感

 ✅強い疲労感

 ✅思考がぼんやりする感覚

 ✅集中力の低下

 ✅軽いめまいや気分不良

患者さまの中には、これを

「頭痛の二日酔い」
「片頭痛の残りカス」

のように表現する人もいます。

頭痛そのものは終わっていても、
日常生活や仕事への復帰を妨げるという意味で、
この段階も臨床的には非常に重要です。

片頭痛を理解するうえで大切なのは、
発作を単なる「痛み」としてではなく、
時間の流れをもった一連の脳のイベント
として捉えることです。

患者さまごとに

どの段階から発作が始まるのか
どの段階が最も生活に影響しているのか

を整理することで、
より適切な治療戦略を立てることができます。

頭痛日誌などを用いて発作のパターンを把握し、
前駆症状や前兆の段階から治療を検討することで、
片頭痛はよりコントロールしやすい疾患になります。

片頭痛は、単なる「頭痛」ではありません。
時間の中で進行する脳のイベントです。

その流れを理解することが、
次の一手を選ぶための第一歩になります。

シリーズ『片頭痛を知る』(全19話)
第1話 片頭痛は「頭痛」から始まるのではない 完

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