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シリーズ「群発頭痛を考える」

千人に一人の最も激しい頭痛

シリーズ「群発頭痛を考える」第1話

千人に一人の
最も激しい頭痛

群発頭痛とはどんな病気か

その特徴と頻度、暮らしへの影響を知る

【監修】氷室クリニック院長・氷室公秀(医学博士・神経内科専門医)

夜中の2時。眠りについて1時間ほどたった頃、片方の目の奥をえぐられるような激しい痛みで目が覚めます。

痛む側の目から涙が流れ、鼻水も出てきます。あまりの痛みにじっと横になっていることができず、頭を抱えて部屋の中を歩き回ります。

1時間ほどすると、あれほど激しかった痛みが嘘のように消えていきます。しかし、翌晩もほぼ同じ時刻に発作が起こります。

こうした状態が数週間から数か月続いたあと、ある日突然、発作が止まります。そして翌年、同じ季節に再び痛みが戻ってくることがあります。

これが、「群発頭痛(ぐんぱつずつう)」と呼ばれる病気の典型例です。

今回から始まる新シリーズのタイトルは、「群発頭痛を考える」です。

前シリーズ「片頭痛を知る」では、片頭痛の仕組みや治療について、現在の医学で分かっていることを紹介してきました。一方、群発頭痛には、まだ解明されていない謎が数多く残されています。

なぜ毎日のように決まった時刻に発作が起こるのか。

なぜ特定の季節に繰り返すのか。

そして、なぜ一部の患者さんでは発作が長期間続くようになるのか。

このシリーズでは、医学的に明らかになっている事実と、まだ研究段階にある仮説を区別しながら、群発頭痛の謎を一緒に考えていきます。

第1話では、その出発点として、群発頭痛がどのような病気なのか、どれほど珍しいのか、患者さんの生活にどのような影響を与えるのか、さらには「挿間性」と「慢性」という2つの型について紹介していきます。

群発頭痛は、片側の目の奥や目の周囲、こめかみなどに、非常に激しい痛みが起こる病気です。

国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、痛みの強さを「重度から極めて重度」とし、治療をしない場合、1回の発作は15分から3時間続き、発作の頻度は2日に1回から1日に8回とされています[1]。

痛みとともに、次のような症状が現れることがあります。

□痛む側の目が充血し、涙が出る
□まぶたが腫れたり、下がったりする
□額や顔に汗をかく
□瞳孔が小さくなる
□落ち着かず、じっとしていられなくなる

これらは、群発頭痛を診断するうえで重要な手がかりになります。

片頭痛との違いは「じっとしていられない」こと

群発頭痛と片頭痛では、痛みが起きたときの行動にも違いが見られます。

片頭痛では、光や音などの刺激を避け、暗く静かな部屋で横になろうとする人が多いのに対し、群発頭痛では、あまりの痛みにじっとしていられず、歩き回ることが典型とされています[1]。

ただし、日本人ではすべての方がそのような行動をとるわけではありません。
日本の頭痛外来で行われた110人の調査では、66%が「落ち着かない感覚」を経験していましたが、実際に歩き回るなどの行動をとった人は45%でした。
つまり、体を動かしたいほどの苦痛を感じながらも、じっと耐えている患者さんも少なくないのです。
ちなみに、イタリアの報告では、落ち着きのない行動は88%に見られています[2]。

また、群発頭痛の大きな特徴は、発作が一定の期間に集中して起こることです。
発作が繰り返される期間を「群発期」、発作が起こらなくなる期間を「寛解期(かんかいき)」と呼びます。
群発期は一般に数週間から数か月続き、その後、数か月から数年にわたって発作のない時期が訪れることがあります[1]。
「群発(cluster)」という名前は、発作がまとまって起こる、この独特の性質に由来しています。

頭痛は、私たちにとって身近な症状です。
世界各地の研究をまとめた最新の集計では、現在何らかの頭痛がある人は人口の52.0%、片頭痛は14.0%、緊張型頭痛は26.0%と推計されています[3]。
日本の全国調査でも、片頭痛は15歳以上の8.4%に見られています[4]。

一方、群発頭痛は非常にまれな病気です。
16の住民調査を統合したメタ解析によると、生涯で群発頭痛を経験する人の割合は約0.124%。
人口10万人あたり124人、およそ千人に一人という計算になります。
また、1年有病率は10万人あたり53人でした[5]。

日本の健康保険組合の加入者を対象にした調査でも、回答者21,480人のうち、群発頭痛と判定された人は21人(0.098%)でした[6]。
米国ミネソタ州の住民研究では、新たに群発頭痛を発症する人は1年に10万人あたり9.8人でした[7]。

1,000人が入るホールを想像してみてください。
その中には片頭痛の人が100人以上いる一方、群発頭痛を経験したことのある人は、およそ1人ということになります。

主な頭痛の頻度を比べると

出典:参考文献[3,4,5]。頭痛全体・緊張型頭痛・片頭痛は現在の有病率、群発頭痛は生涯有病率であり、調査対象や指標が異なります。

この珍しさは、医療現場においても重要な意味を持ちます。
群発頭痛の患者さまを診察する機会が少ないため、医師であっても、その特徴を十分に把握することが難しい場合があるのです。
こうした事情が、後に紹介する「診断の遅れ」にも関係していると考えられます。

群発頭痛は、片頭痛とは対照的に、男性に多く見られる病気です。
複数の研究を統合した解析では、患者さんの男女比は男性4.3に対して女性1でした[5]。

ただし、この男女差は時代とともに小さくなっている可能性があります。
スウェーデンで554人の患者さんを調べた研究では、1960年代までに発症した人の男女比は5.9対1でしたが、1990年代に発症した人では3.1対1に縮まっていました[8]。
日本の110人を対象とした調査でも、男女比は約3.1対1でした[2]。

女性の患者さんが実際に増えているのでしょうか。それとも、以前は見逃されていた女性の群発頭痛が、正しく診断されるようになったのでしょうか。
この点については、まだ明確な結論が出ていません。

また、群発頭痛は比較的若い年代で発症することが知られています。
日本の調査では、発症時の平均年齢は30.7歳でした[2]。

仕事や家庭生活など、社会的にも活動の中心となる年代に始まりやすいことも、この病気が患者さんに与える影響を考えるうえで見逃せない点です。

群発頭痛の痛みは、実際にどれほど強いのでしょうか。
1,604人の患者さまを対象とした国際的な質問票調査では、自分が経験した痛みを0から10までの尺度で評価してもらいました。[9]
その結果、群発頭痛の痛みは平均9.7点でした。

経験した痛みの強さ(10点満点)

群発頭痛出産膵炎尿路結石
9.77.27.06.9
※参考文献[9]をもとに作成。各項目の痛みを経験した回答者による主観的評価であり、痛みの強さには個人差があります。

出産や尿路結石など、強い痛みとして知られる経験と比較しても、群発頭痛は極めて高い評価でした。
もちろん、痛みの感じ方には個人差があります。それでも、この結果は群発頭痛がいかに激しい苦痛を伴う病気であるかを物語っています。

「自殺頭痛」という呼び名が示す、発作の深刻さ

群発頭痛は、その痛みの激しさから「自殺頭痛」と呼ばれることがあります。
韓国で行われた175人の患者さんを対象とする研究では、群発期の発作中に「死んでしまいたい」と感じた人が64.2%、自ら命を絶つことを考えた人が35.8%に上りました。
一方、発作のない時間帯ではその割合は大きく低下し、寛解期にはほとんどいませんでした[10]。

また、2025年のメタ解析では、群発頭痛の患者さん全体の自殺リスクが一般人口より明らかに高いとは結論づけられていません。
ただし、専門施設を受診する患者さんでは、自殺念慮が44.6%と高い割合で認められています[11]。

ここで大切なのは、発作中の耐え難い痛みそのものが、患者さんを極限の苦痛に追い込むことがあるという事実です。
「自殺頭痛」という呼び名は病気の深刻さを伝える一方、患者さんに不必要な恐怖を与える可能性もあります。
重要なのは、その呼び名ではなく、激しい発作をできるだけ速やかに抑え、患者さんを苦痛から守ることです。
適切な診断と治療につなげることが、何よりも求められます。

群発頭痛が患者さんに与える負担は、発作が起きている時間だけではありません。

デンマークで行われた研究では、400人の群発頭痛患者さんと200人の対照者を比較しています。
その結果、群発期に私生活や仕事が制限されたと答えた患者さんは94%に上りました。
また、発作のない寛解期であっても、挿間性群発頭痛の患者さんの15%が生活への制限を感じていました[12]。

なぜ、痛みがないときにも影響が残るのでしょうか。

例えば、「今夜も発作が起こるかもしれない」という不安から、外出や飲酒を伴う集まりを控えたり、出張や旅行の予定を立てにくくなったりすることが考えられます。
夜間の発作によって睡眠が妨げられれば、翌日の仕事や日常生活にも支障が生じます。
自分の健康を「悪い」と評価した人は、挿間性の群発期で20%、慢性型では34%でした[12]。

さらに、慢性型では長期間にわたって発作が繰り返されるため、経済的負担がいっそう大きくなる場合があります。デンマークの推計では、1人あたり年間の直接医療費は、慢性型で9,158ユーロ、挿間性で2,763ユーロでした[6]。

つまり、群発頭痛の治療では、発作時の痛みを抑えるだけでなく、患者さんが安心して日常生活を送れるようにすることも大切なのです。

正しい診断まで、平均10年以上かかることも

群発頭痛には、もう一つ大きな問題があります。
それは、正しく診断されるまでに長い時間がかかることです。

11の研究を統合した2025年のメタ解析では、最初の発作から群発頭痛と診断されるまでの期間は平均10.4年でした[13]。
日本の110人を対象とした調査でも、発症から診断までに平均8.1年かかり、66%の患者さまは、それまでに受診した医療機関で群発頭痛と診断されていませんでした[2]。

珍しい病気であることに加え、目や鼻の症状が目立つため、別の病気と考えられ、効かない治療を何年も続けてきた患者さんも少なくないということです。
ただし、近年は診断基準の普及や医療情報へのアクセスの改善によって、診断までの期間が短くなる傾向も報告されています[13]。

群発頭痛の特徴を患者さま自身が知ること、そして医療者がこの病気を適切に認識すること。
その両方が、診断の遅れを減らすために重要です。

群発頭痛は、発作の起こり方によって、大きく2つの型に分けられます。
それが「挿間性群発頭痛」と「慢性群発頭痛」です[1]。

挿間性群発頭痛
→ 発作が集中する時期と、落ち着く時期がある

挿間性(そうかんせい)群発頭痛は、一定期間に発作が繰り返されたあと、3か月以上にわたって発作のない寛解期が訪れるタイプです。
群発期は7日から1年続くと定義されています。
多くの患者さまは、この挿間性に分類されます。

慢性群発頭痛
→ 発作が長期間にわたって続く

一方、慢性群発頭痛は、1年以上にわたって寛解がない、または寛解期があっても3か月未満にとどまるタイプです。
発作から十分に解放される期間がないため、生活への影響が長く続きやすくなります。
ICHD-3によれば、患者さんの10〜15%が慢性型です。
また、経過をよく追えた大きな症例集では、4人に1人は群発期を一生に1回しか経験しなかったとされています[1]。

慢性型の割合は、地域によって大きく異なる

興味深いことに、慢性群発頭痛の割合には地域差が報告されています。
欧米の研究では19〜31%に上る一方、東アジアでは0〜7.5%、日本では1.2〜2.8%とされています[2]。
なぜ、これほど大きな違いがあるのでしょうか。
遺伝的な背景や生活習慣の違いが関係しているのかもしれません。
あるいは、診断のされ方や医療機関への受診状況が影響している可能性もあります。
現時点では、はっきりした理由は分かっていません。

挿間性と慢性は、変化することがある

もう一つ知っておきたいのは、挿間性と慢性が必ずしも固定された状態ではないということです。
デンマークで430人を追跡した研究では、5年間で挿間性から慢性型に移行した人が12.3%いました[14]。
一方、慢性型から挿間性へ移行した人も25.0%いました。
つまり、一度慢性型になったからといって、その状態が生涯続くと決まったわけではありません。
何が慢性化に関係するのか。そして、何が発作の経過を変えるのか。
この問いも、群発頭痛を理解するうえで重要な研究テーマの一つです。

ここまで、群発頭痛の特徴や頻度、患者さんの生活への影響、そして2つの病型について紹介してきました。
群発頭痛には、ほかの頭痛とは異なる、際立った特徴があります。
それは、発作が起こる「時間」に、一定の規則性が見られることです。
毎晩ほぼ同じ時刻に発作が起こり、毎年同じような季節に繰り返すことがある。
まるで体の中にある時計が、発作のタイミングを決めているかのようです。

さらには、痛みの強さ、生活への打撃、2つの型の行き来。
これらはどれも、この「時間」の性質と深く結びついているように見えます。

なぜ、このような現象が起こるのでしょうか。
その謎を解く鍵として注目されているのが、私たちの体に備わっている「体内時計」の仕組みです。
次回からは、体内時計に関する研究を手がかりに、群発頭痛の発作がなぜ特定の時刻や季節に起こりやすいのかを考えていきます。
医学的に確かめられた事実と、まだ検証が必要な仮説を丁寧に区別しながら、少しずつその謎に迫っていきましょう。

シリーズ「群発頭痛を考える」
第1話 千人に一人の、最も激しい頭痛 完

参考文献

1.Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia. 2018;38(1):1-211. doi:10.1177/0333102417738202.

2.Imai N. 本邦における群発頭痛の実態. 臨床神経学. 2013;53(11):1128-30. doi:10.5692/clinicalneurol.53.1128. PMID: 24291902.

3.Stovner LJ, Hagen K, Linde M, Steiner TJ. The global prevalence of headache: an update, with analysis of the influences of methodological factors on prevalence estimates. J Headache Pain. 2022;23(1):34. doi:10.1186/s10194-022-01402-2. PMID: 35410119.

4.Sakai F, Igarashi H. Prevalence of migraine in Japan: a nationwide survey. Cephalalgia. 1997;17(1):15-22. doi:10.1046/j.1468-2982.1997.1701015.x. PMID: 9051330.

5.Fischera M, Marziniak M, Gralow I, Evers S. The incidence and prevalence of cluster headache: a meta-analysis of population-based studies. Cephalalgia. 2008;28(6):614-8. doi:10.1111/j.1468-2982.2008.01592.x. PMID: 18422717.

6.Kim SA, Choi SY, Youn MS, Pozo-Rosich P, Lee MJ. Epidemiology, burden and clinical spectrum of cluster headache: a global update. Cephalalgia. 2023;43(9):03331024231201577. doi:10.1177/03331024231201577. PMID: 37728577.

7.Swanson JW, Yanagihara T, Stang PE, O’Fallon WM, Beard CM, Melton LJ 3rd, et al. Incidence of cluster headaches: a population-based study in Olmsted County, Minnesota. Neurology. 1994;44(3 Pt 1):433-7. doi:10.1212/wnl.44.3_part_1.433. PMID: 8145911.

8.Ekbom K, Svensson DA, Träff H, Waldenlind E. Age at onset and sex ratio in cluster headache: observations over three decades. Cephalalgia. 2002;22(2):94-100. doi:10.1046/j.1468-2982.2002.00318.x. PMID: 11972575.

9.Burish MJ, Pearson SM, Shapiro RE, Zhang W, Schor LI. Cluster headache is one of the most intensely painful human conditions: results from the International Cluster Headache Questionnaire. Headache. 2021;61(1):117-24. doi:10.1111/head.14021. PMID: 33337540.

10.Ji Lee M, Cho SJ, Wook Park J, Kyung Chu M, Moon HS, Chung PW, et al. Increased suicidality in patients with cluster headache. Cephalalgia. 2019;39(10):1249-56. doi:10.1177/0333102419845660. PMID: 31018651.

11.Van Obberghen EK, Fabre R, Lanteri-Minet M. Cluster headache suicidality: a systematic review with a meta-analysis. J Headache Pain. 2025;26(1):281. doi:10.1186/s10194-025-02140-x. PMID: 41345548.

12.Petersen AS, Lund N, Snoer A, Jensen RH, Barloese M. The economic and personal burden of cluster headache: a controlled cross-sectional study. J Headache Pain. 2022;23(1):58. doi:10.1186/s10194-022-01427-7. PMID: 35610587.

13.Van Obberghen EK, Fabre R, Lanteri-Minet M. Cluster headache diagnostic delay and its predictors: a systematic review with a meta-analysis. J Headache Pain. 2025;26(1):71. doi:10.1186/s10194-025-02001-7. PMID: 40205372.

14.Søborg MLK, Petersen AS, Lund N, Barloese MCJ, Jensen RH. Transition of cluster headache: depicting side-changing attacks as a chronic trait in an interview-based follow-up study. Cephalalgia. 2024;44(6):03331024241258485. doi:10.1177/03331024241258485.

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