多発性硬化症multiplesclerosis(MS)は、中枢神経系(脳・脊髄)に「脱髄」というタイプの炎症を起こす疾患です。時間的・空間的に病変が多発する、すなわち、繰り返しいろいろな症状が出現することが特徴です。通常、詳細な病歴聴取や経時的な神経学的診察により時間的・空間的な病変の多発性を証明し、他の疾患を否定することで診断が確定します。脳MRIや脊髄MRIにて画像上、炎症性脱髄病巣が中枢神経組織に出現していることが確認できます。髄液検査にて髄腔内での炎症の活動性の有無を調べたり、そのほか他疾患の除外のために血液検査を行います。
最近、抗アクアポリン4(AQP-4)抗体という自己抗体の発見により、これまで視神経脊髄型MSと言われた中に視神経脊髄炎(NMO)が含まれていると考えられるようになってきています。一方、欧米人に多く、視神経や脊髄のみならず大脳や小脳に病変が多発するMSは通常型MSと呼ばれます。両者は異なった治療スタイルを必要とします。