運動ニューロン病とは

運動ニューロン病

「運動ニューロン病」とは

骨格筋を支配している末梢神経の母体である脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)、さらにその脊髄前角細胞に随意運動のための刺激を送ってくる大脳皮質の運動神経細胞(上位運動ニューロン)(その神経線維は錐体路、脊髄では側索を通ります)を運動ニューロンと呼びます。運動ニューロン病とは、これらの運動神経細胞が緩徐に変性していく疾患の総称です。狭義には筋萎縮性側索硬化症(ALS)を指しますが、広義には、ALSのほか、同じように運動ニューロンの変性を主体とする球脊髄性筋萎縮症や、ウェルデニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルク・ウェランダー病、慢性脊髄性筋萎縮症などを含めて用いています。

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
    代表的疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンがともに選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患です。症状は、筋萎縮と筋力低下が主体であり、進行すると上肢の機能障害、歩行障害、構音障害、嚥下障害、呼吸障害などが生じます。一般にしびれなどの感覚障害や排尿障害、眼球運動障害がみられないことが特徴とされていますが、人工呼吸器による長期生存例などでは、認められることもあります。病勢は比較的速く進行します。
  • 球脊髄性筋萎縮症(SBMA)
    球脊髄性筋萎縮症(SBMA)とは、成人男性に発症する、遺伝性の下位運動ニューロン疾患です。四肢の筋力低下および筋萎縮、球麻痺(しゃべりにくさ・のみこみにくさ)を主症状とし、女性化乳房など軽度のアンドロゲン不全症や耐糖能異常、高脂血症などを合併します。筋力低下の発症は通常30~60歳ごろで、経過は緩徐進行性です。X染色体長腕近位部に位置する、アンドロゲン受容体遺伝子第1エクソン内にあるCAGの繰り返しが、異常延長していることが本症の原因であり、CAGの繰り返し数と発症年齢との間に逆相関がみられます。男性ホルモンが神経障害の発症・進展に深く関与していると考えられています。

治療の流れ

ALSは現在でも原因が特定されておらず、明確な治療法が確立されていません。ですが、少しずつその解明が進んでいます。現在では、運動障害による関節拘縮予防のリハビリテーション、嚥下障害のための経管栄養、呼吸障害のための人工呼吸管理などが行われます。亜型や類似疾患もあり、神経内科専門医による正確な診断と詳細な病態観察により初めて確定診断がなされる疾患ですので、まずは神経内科専門医の診察を受けるようにしてください。

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