力が入らない…
筋肉がやせてきた…
その症状、“神経の病気”かも!
手や足に力が入りにくい、動かしづらい…。
筋肉がやせてきた…。
こうした症状がゆっくり進行している場合、
運動神経に関わる病気の可能性があります。
中でも「運動ニューロン病」は、
神経内科での早期発見と継続的なサポートが重要な疾患です。
ご本人やご家族が
「なんとなく動きが鈍くなった」
「力が出ない」と感じたときは、
まず神経内科専門医にご相談ください。
運動ニューロン病とは?
「運動ニューロン病」とは、
運動機能を司る神経細胞(運動ニューロン)が
徐々に障害されていく疾患の総称です。
この運動ニューロンには、
脳から運動の指令を出す上位運動ニューロンと、
脊髄から筋肉へ指令を伝える下位運動ニューロン
があります。
そのいずれか、または両方が障害されることによって、
体を動かす力が失われていきます。
代表的な疾患には以下があります。
【筋萎縮性側索硬化症(ALS)】
中年以降に発症し、全身の筋肉が徐々にやせ細り、力が入らなくなる進行性の神経疾患です。
初期は手足の筋力低下や筋萎縮から始まり、進行とともに構音障害(話しにくさ)、嚥下障害(飲み込みにくさ)、呼吸筋の障害などへと広がります。
特徴的なのは、感覚や排尿・眼球運動が保たれることが多い点です。
【球脊髄性筋萎縮症(SBMA)】
成人男性に発症する、遺伝性の下位運動ニューロン病です。
しゃべりにくさや飲み込みづらさ(球麻痺)とともに、四肢の筋力低下や筋萎縮が進行します。
ホルモンバランスや代謝異常を伴うことも多く、比較的ゆっくりと症状が進みます。
神経内科での
診断と治療の特徴
運動ニューロン病は、
他の病気と似た初期症状が多く、
診断に専門的な知識と経験が求められる疾患です。
大阪・都島の氷室クリニックでは、
以下のような流れで診断を行います。
□詳細な問診と神経学的診察
□MRIによる脳・脊髄の評価
□神経伝導検査や筋電図検査
□血液検査やホルモン・遺伝子検査(必要に応じて)
「手が動かしにくい」
「手先が使いづらい」
といった初期症状の段階であっても、
丁寧な診察と検査の積み重ねが、
早期発見につながります。
→ MRI+神経生理検査についてもっと詳しく
運動ニューロン病の
治療とケア
現在、運動ニューロン病の多くには
病気そのものを根本的に治す方法(完治のための治療)は
見つかっていません。
しかし、病気の進行をゆるやかにしたり、
生活のしやすさや安心感を保つための医療や支援は多くあります。
主なサポート・治療の例
【リハビリテーション】
筋力が落ちたり関節が固まらないよう、体を動かす支援を行います。
【飲み込みの難しさへの対応】
うまく食事ができない場合は、胃に直接チューブを入れる「胃ろう」などで栄養を補います。
【呼吸のサポート】
息がしづらくなったときは、家庭でも使える人工呼吸器(在宅NPPVなど)を使用します。
【声が出にくくなったときの対策】
コミュニケーション機器などを活用して、意思の伝達を助けます。
【SBMA(球脊髄性筋萎縮症)の方へ】
ホルモン(アンドロゲン)の影響を評価し、内分泌や代謝の調整を行う治療が行われます。
【ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方へ】
病気の進行を遅らせることを目的に「ロフェルミン(ロピニロール)」や「ラジカット(エダラボン)」という薬を使用することがあります。
病気の特徴に応じた
「長く続けられる治療」を
たとえば、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)は、
アンドロゲン受容体という体内のホルモン受け皿の
異常が原因で起こります。
そのため「リュープリンSR」などの
“ホルモン分泌を抑える治療(抗アンドロゲン療法)”
が行われることがあります。
この治療は、神経細胞への負担を減らし、
症状の進行をゆるやかにすることを目的としています。
継続的で柔軟な診療体制が大切です
運動ニューロン病の中でも、
ALSやSBMAのような病気では、
症状が少しずつ進行していくため、
時期によって必要なサポートが変わっていきます。
そのため、一人ひとりの状況に応じた、
継続的で柔軟な医療体制がとても重要です。
大阪・都島の氷室クリニックでは、
医師・看護師・リハビリテーションスタッフなど、
さまざまな専門職が連携しながら、
患者さんとご家族を支える体制を整えています。
よくある質問(FAQ)
Q1.
ALSと診断されるまでにどれくらい時間がかかりますか?
A1.
初期は症状があいまいなことも多く、確定診断には複数の検査と経過観察が必要です。
神経内科専門医による評価が重要です。
Q2.
遺伝する病気なのでしょうか?
A2.
ALSは多くの場合、遺伝しません。一部に家族性ALSがあります。
SBMAは遺伝性疾患ですが、限られた範囲です。
Q3.
治療をしないとどうなりますか?
A3.
放置すると筋力の低下や呼吸障害が進行する可能性があります。
治療により進行を緩やかにし、生活の質を保つことができます。
運動ニューロン病は、
早期の気づきと正確な診断が、
その後の生活に大きな差を生みます。
気になる症状があれば、
どうかひとりで抱え込まず、
神経内科専門医にご相談ください。