LINE予約
Web予約
電話
アクセス
Web問診票

MRI

神経内科×MRI “見える診断”の裏側 03

case 03

MRIで見る 脳萎縮のサイン 

脳を横から見た断面のMRI画像
「T1強調画像の矢状断」でわかること


【監修】氷室クリニック MRI・診療放射線技師チーム RadiLink

CONTENTS

1:T1強調画像の矢状断でわかること
2:「縮んでいる場所」で考える
  ① 中脳が縮んでいるとき
  ② 橋(きょう)が縮んでいるとき
  ③小脳虫部が縮んでいるとき
  ④ 小脳が全体的に縮んでいるとき
  ⑤ 延髄が縮んでいるとき
  ⑥ 頸髄が縮んでいるとき
3:まとめ〜見るポイントでわかる病気のヒント〜
4:最後に〜見逃したくない病気のヒントが詰まったMRI画像〜
※経験豊富な診療放射線技師との連携で、より確かな診断へ(氷室クリニック院長・氷室公秀)

1:T1強調画像の矢状断でわかること 

MRI検査というと、
「異常があるかどうかを見るもの」
というイメージが強いかもしれません。

しかし実は、
脳の“形”を見ること
とても重要です。

特に、「T1強調画像の矢状断」では、
さまざまな病気の断片を
一目で確認することができます。



「T1強調画像の矢状断」とは?

MRIにはいくつかの撮り方がありますが、
T1強調画像の矢状断とは、脳を横から見た断面の画像のことです。

ちょうど、体を左右に分けるようにスライスしたイメージで、
脳幹や小脳の形を一目で確認できるのが特徴です。

特に、脳の“厚み”や“縮み具合(萎縮)”が見やすいため、
神経の病気を考えるうえで重要なヒントになることがあります。

どこが一番縮んでいるか?

T1強調画像の矢状断で
「どこが一番縮んでいるか?」
この一点に注目するだけで、
病気の方向性が見えてくることがあります。

中脳なのか、橋なのか、小脳なのか、
あるいは延髄や頸髄なのか…。
萎縮の中心を意識することで、
鑑別の方向性が見えやすくなるのです。

2:「縮んでいる場所」で考える

① 中脳が縮んでいるとき

脳の中心にある「中脳」だけがくびれて見える場合があります。

このとき、横から見ると
  “鳥の頭”のような形(ハミングバードサイン)
に見えるのが特徴です。

この所見は、
👉進行性核上性麻痺(PSP)
という病気でよく見られます。

ただし、早期には明瞭でないこともあるため注意が必要です。 

② 橋(きょう)が縮んでいるとき

脳幹の中央にある「橋」が萎縮している場合は、見方が少し重要です。

●  橋+小脳が全体的に萎縮(全体型)

→ 全体(橋・小脳虫部・小脳半球)がスリムに見える

👉 脊髄小脳変性症(SCD)
が疑われます。(SCA6などを含む)

■ 橋の底部が特に萎縮

→ 橋底部が頭側から尾側まで扁平に見え、中小脳脚も細くなる場合

👉 多系統萎縮症(MSA-P / MSA-C)
を疑います。

→橋の中心~尾側が“斜めにえぐれた”ように見える場合

👉マシャド・ジョセフ病(MJD:SCA3)
も鑑別にあがります。

なお、軸位T2強調画像でみられる
Hot cross bun sign(HCB sign)は参考所見ですが、
MSAに特異的ではなく、
SCDなどでもみられるため注意が必要です。

Hot cross bun sign(HCB sign)

  • 軸位T2/FLAIRで橋中央に「十字型」の高信号が出るサイン。
  • 古典的には MSA-C に特異度が高いとされてきたが、SCA1/2/3 など SCD の一部や自己免疫性疾患でも報告されており、「MSA を強く疑わせるが、MSA に限らないサイン」として位置づけられる。

③ 小脳虫部が縮んでいるとき


前上部の虫部が強く萎縮し、
矢状断で「上虫部がえぐれた」ように見える場合

👉 アルコール性小脳変性症
をまず疑います

④ 小脳が全体的に縮んでいるとき

虫部と半球がバランスよく萎縮し、小脳全体が均一に薄くなる(皮質性小脳萎縮:CCA)場合

👉 脊髄小脳変性症(SCD)
を考えます

一方で、

橋や周囲の構造(中小脳脚・小脳半球)も一緒に萎縮し、後頭蓋窩全体が扁平で“沈んだ”ように見える場合


👉 多系統萎縮症(MSA-C)
が疑われます

💡ポイント
「小脳だけか?それとも橋も一緒か?」を見ることが大切です。
これにより、SCD系かMSA系かの方向性が見えてきます。

⑤ 延髄が縮んでいるとき

橋は保たれているのに、
脳幹の下の部分(延髄)から
首の脊髄にかけて萎縮している場合

矢状断では「頭が大きく、しっぽが細い」
おたまじゃくし様(tadpole sign)に見えます。

👉 成人型アレキサンダー病
で見られる特徴です。

⑥ 頸髄が縮んでいるとき

延髄から首の脊髄にかけて連続して細くなり、全体的に厚みが減っている場合
その部分の萎縮が考えられます。

このような所見では、
👉 成人型アレキサンダー病
が鑑別にあがります。

さらに、
前頭葉の白質や脳の中心(側脳室の周囲)に
白く見える変化(T2w高信号)がある場合

👉小脳や脊髄だけでなく、大脳にも病変が及んでいる可能性を示す重要な所見です。


一方で、頸髄(首の脊髄)が全体的に細くなっている場合

👉フリードライヒ失調症
(脊髄を中心に障害が起こる遺伝性の病気)などが考えられます。

💡ポイント
「延髄まで萎縮しているか」「脊髄主体なのか」を意識することが重要です。

3:まとめ 〜見るポイントでわかる病気のヒント

T1強調画像の矢状断では、
「どこが一番萎縮しているか」
を起点に考えることで、
所見を整理しやすくなります。

●​​中脳 → PSP(hummingbird sign) 

●橋 → SCD(全体型)/MSA・MJD(橋底部や形状変化) 

●小脳虫部 → アルコール性変性 

●小脳全体 → SCD(びまん)/MSA-C(橋・MCPを含めて萎縮) 

●延髄 → AOAD(tadpole sign) 

●頸髄 → AOAD/脊髄優位の遺伝性失調症

といったように、病気のヒントが見えてきます。

実はこの「T1強調画像の矢状断」は、
すべての医療施設で必ず撮影されているわけではありません。

しかし、変性疾患の評価においては、
この1断面が診断のヒントになることがあります。

いわば、見逃したくない病気のヒントが詰まった大切な1枚です。

氷室クリニックでは、
神経内科の視点から必要に応じてこの撮影を行い、
より丁寧な診断につなげています。

「ただの画像」ではなく、
「形から読み取る診断」へ。

一見シンプルな断面ですが、
「どこが萎縮しているか」に注目するだけでも
見え方は変わります。

日常の撮影や読影の中で、
ひとつの視点として役立てていただければ幸いです。

関連記事

最近の記事
  1. 神経内科×MRI “見える診断”の裏側 03

  2. いつもの頭痛と違うかも…頭痛が怖くなったら読むコラム― 危険な頭痛の見分け方 ―

  3. 片頭痛治療の新しい選択 ~「発作時治療」と「予防」の両方を1剤で~リメゲパント(ナルティーク)