氷室クリニック 看護師 井出典子
CONTENTS
1.自己注射?院内注射?〜患者さんのリアルな声〜
2.自己注射は本当に難しい?
3. 「タイパ」を重視するなら自己注射
4. 「コスパ」で考えるなら院内注射?
5. 「注射してもらうこと」そのものが安心になる
6.あなたにあった治療法で
1. 自己注射?院内注射?〜患者さまのリアルな声〜
「えっ、打てるかな?」
「怖い。自分でするの?」
「難しくない?」
そんな不安から始まる方も多い
片頭痛予防薬「抗CGRP製剤」の自己注射。
実際にやってみると…
「意外に簡単でした」
「でも私は看護師さんに打ってもらう方が安心」
「どっちが安いんですか?自分で打つのと病院で打つの」
…と、患者さまによって感じ方はさまざま。
中には
「失敗して斜めに刺して液が少し漏れたけど、頭痛がひどくなることはなかった」
という体験談もあります。
片頭痛予防薬についての詳細は
下記のコラムをご参照ください。
2. 自己注射は本当に難しい?
看護師にとっては日常の注射。
「簡単♪簡単♪」とつい言ってしまいますが、
初めて注射を体験する患者さまにとっては、
緊張の瞬間。
「ほんとにできるのかな?」
と構えてしまったり、
「不安やわ!」
「邪魔くさい!」
など色々と感じるのも、自然なことだと思います。
ただ、最近の自己注射は、ほんと〜にカンタンです!
注射薬には今のところ
「エムガルティ」「アイモビーグ」「アジョビ」
の3種類があります。
どれもシンプルで安全に作られていて、
キャップやロックを外してボタンを押すだけで
自己注射ができます。

最初は院内で注射していた方でも、
途中から自己注射に切り替えて、
「思ったより簡単だった」
とおっしゃることも少なくありません。
ご家族や友人が看護師で、
代わりに注射をしているケースもあります。

実際に看護師が指導している注射の打ち方が、
こちらです。

お腹や太ももに垂直に当てて、ボタンを押すだけ!
(写真は指導時ですので服を着ていますが、実際はお肌に直接当ててくださいね)
3. 「タイパ」を重視するなら自己注射
「受診する時間がない」
「通院がもったいない」
そんなあなたには、
自己注射が生活スタイルに合っているかもしれません。
また、注射薬のひとつ「アジョビ」では、
1回に3本まとめて投与し、3~4ヶ月後に再受診する方法もあります。
一度に複数本打つので、
その時の痛みや支払いは大きくなりますが、
受診間隔を大きく空けられるのは
忙しい方にとって大きなメリットです。
医療機関によっては、
初回は院内注射で、以後は自己注射で、
と決まっているところもありますが、
私はどちらでもよいのではないかと思っています。

4. 「コスパ」で考えるなら院内注射?
抗CGRP製剤は、内服薬と比べると価格は高めです。
自己負担額を気にする方も多い印象です。
院内注射の場合
→診察料(再診料・処方料)
+注射薬(1回分)
+皮下注射料(1回分)
自己注射の場合
→基本の診察料
+自己注射に対しての指導や必要物品料
+薬局での薬剤料
参考に1回の支払額を表にしてみました。(自己負担3割の場合)

【注意事項】
※1度に3本施行できるのは保険点数上「アジョビ」のみになります。
※注射薬によって若干価格が違うため金額の幅があります。
※価格には片頭痛で受診した診察料+薬剤料(薬局の処方料)が含まれています。
※内服の処方数やジェネリックによって若干の価格変動があります。
継続して実施する場合、
トータルの費用は大きく変わりませんが、
月々の負担を抑えたい場合は、
院内注射を毎月実施する方法を選ばれるとよいでしょう。
院内注射でも3本の1回実施や、自己注射の3ヶ月分処方だと
自己負担額が高額になりますが、
企業の健康保険組合や共済組合に加入している方なら、
付加給付制度で自己負担が軽減される場合もあります。
1か月の自己負担上限を超えた分が戻ってくる仕組みなので、
加入している保険の窓口に確認すると安心です。
あと、お問い合わせで多い質問が、
「注射薬によって価格差があるけど、高い方が良く効くの?」
ですが、これに関しては注射薬との相性もあるので、
価格が高いから良く効くとは言えません。
診察時に、あなたにあった注射薬はどれか、
神経内科専門医に相談されるとよいでしょう。

5. 「注射してもらうこと」そのものが安心になる
一方で、以下のような方は院内注射が向いているようです。
「針が怖い」
「うまくできる自信がない」
「面倒くさい」
「話を聞いてほしい」
看護師に注射してもらう時間は、
単に処置を受けるだけではなく、
□頭痛の近況を話す
□薬の飲み方や生活習慣を確認する
□家事や仕事での工夫を共有する
など、患者さまが自分の生活を振り返るきっかけにもなります。
「診察室では言いにくかったことを看護師に話すことで、頭や心が整理できた」
と感じる方も多いようです。
他者への配慮や気遣いで
自分のことが後回しになりやすい昨今…。
何でもない話をできるような時間は
案外少ないのかもしれませんね。
特に頭痛の患者さまは若い方が多く、
見た目が元気そうに見えてしまうため、
周囲から理解されにくいこともあるでしょう。
看護師である私も、 実は片頭痛患者です。
「忙しそうだから声をかけにくい」と遠慮せず、
何気ないことでもぜひ看護師にお話しください。

6.あなたにあった治療法で
片頭痛の注射治療は、
タイパを優先するなら「自己注射」
コスパや安心感を重視するなら「院内注射」
という選び方ができます。
費用や制度、生活スタイルは人それぞれ。
どちらが正解というものではなく、
あなたに合った治療のカタチを
一緒に探していきましょう。
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本記事は当院看護師による体験やを中心に構成しています。診断や治療を保証するものではありません。
また、医療的な記述については、神経内科専門医・氷室公秀が監修しています。症状に不安がある方は、必ず専門医にご相談ください。
