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神経内科コラム

MRIには映らない頭痛の原因!? 神経内科専門医が診る“見えない不調”とは?

【監修】氷室クリニック院長・氷室公秀(医学博士・神経内科専門医・認知症専門医)

Contents


MRI検査で異常なし。
でも頭痛が続く…

最近は、「頭痛と言えば検査」と思っておられる方が増えてきました。
近隣の頭痛外来でMRI検査を受け、「異常がない」と言われると、ほっとして帰られる方も多いそうです。
ですが、MRI検査で“異常なし”と診断されても、痛みや不快感が治まる訳ではありません。

そこには、神経の働きやストレス、生活習慣の癖や乱れといった“MRIには映らない原因”が関係している可能性があるからです。

大切なのは、「異常がない=問題ない」とは限らない、ということ。

当院では、MRIに映らない“機能の異常”にもしっかりとアプローチして、頭痛の原因として見逃さないよう努めています。

「どうして痛いのかわからない」
そんなお悩みに、一緒に向き合っていく。
これも神経内科専門医の役割のひとつと考えています。

脳の“機能の異常”は、
MRIには映らない!

脳の病気には、「構造の異常(脳出血・脳腫瘍など)」と「機能の異常(神経の働きの乱れ)」の2種類があります。

MRIは構造の異常を見つけるにはとても優れた検査ですが、
神経の働きや生活習慣の癖や乱れといった“機能の問題”までは映し出せません

たとえば、よくある片頭痛などは、MRIの画像には何も映らないのです。

片頭痛とは?


片頭痛は、頭の片側または両側にズキンズキンと脈打つような痛みが出る頭痛です。
この発作的な痛みは、「三叉神経(さんさしんけい)」という神経が強く興奮することで始まります。

次のようなさまざまな要因が三叉神経の興奮を引き起こすと考えられています:

 □遺伝的な体質
 □女性ホルモンの変動(月経の前後や更年期など) 
 □天気の変化(特に気圧の低下)
 □ストレスや疲れ
 □飲酒やチョコレートなど、一部の食べ物

こうした刺激で三叉神経が過敏になると、
 □視界にキラキラした光が見える(閃輝暗点)
 □音や光がつらく感じる(感覚過敏)
 □前額部のに鈍い痛みを認める(三叉神経の炎症))
などの前ぶれ(前兆)が出ることがあります。

三叉神経が興奮すると、「CGRP」という物質が放出され、神経がさらに刺激されます。
これが引き金となって、脳の血管が拡がり、その拍動によって痛みが発生します。
この流れが、片頭痛のメカニズムとされています。

● 日常生活でできる予防
片頭痛は完全に防ぐことが難しい場合もありますが、次のような生活習慣の見直しが予防につながります
 □睡眠時間をしっかり確保する
 □ストレスをためない工夫をする
 □お酒の飲みすぎや片頭痛を誘発する食べ物を控える

● 予防のための薬
症状が頻繁に出る場合は、医師と相談しながら予防薬を使うことがあります
 □抗てんかん薬や抗うつ薬(ストレスや神経の過敏さを抑えます)
 □カルシウム拮抗薬やβ遮断薬(血管の過剰な拡張を防ぎます)
 □抗CGRP抗体薬(三叉神経の興奮そのものを抑える新しい治療法です)

● 発作が起きたときの治療
痛みが出たときには、できるだけ早めに次のような薬を使うことが効果的です
 □痛み止め(消炎鎮痛剤)
 □トリプタン系薬剤:拡がった血管を収縮させて痛みを抑えます

三叉神経が関係する片頭痛は、遺伝的な傾向が強い頭痛のひとつです。
ご両親のどちらかが頭痛持ちの場合、その体質を受け継ぐことが少なくありません。
この遺伝的な要素に加え、ホルモンバランスの変化(特に女性では初潮以降)や、ストレスなどの環境要因がきっかけとなって、片頭痛が起こることがあります。
また、働きはじめた後など、生活のリズムや負担が変わる時期に症状が目立つようになる方もいます。

症状が強い場合には、学校や仕事に支障をきたし、日常生活の質(QOL)が大きく下がってしまうこともあるため、適切な診断と治療が重要です。

頭痛プロファイリング+MRI
MRIを“読む”頭痛診療

頭痛の診療で大事なことは、多種多様な頭痛の臨床形を知っていて、その鑑別に合わせたMRI画像検査が行えるかどうかです。

たくさんの頭痛の臨床形を学んでいる神経内科専門医は、個々の頭痛の特性や原因を特定するために、患者さまの訴えや症状、過去の病歴、生活習慣などを詳細に分析します。
その鑑別を考えたうえで画像検査を行うことにより、適切な診断と治療法の選択につなげていきます。
いわば、頭痛のプロファイリングですね。

神経内科専門医の
頭痛の分類例


「片頭痛」「緊張性頭痛」「群発頭痛」などの慢性頭痛は「一次性頭痛」と呼ばれ、他に原因となる病気がなく、頭痛自体が治療の対象となります。

一方、脳出血や脳腫瘍など、何らかの病気の症状として起こる頭痛は「二次性頭痛」と呼ばれ、命にかかわるような疾患が原因の場合があります。

一般的にMRI検査は、この二次性頭痛を発見、および頭痛の原因から除外するために行われます。

神経内科のMRI検査

神経内科では、前述のプロファイリングに基づき、検査範囲を特定してから撮影を行います。

たとえば
●「クラウンドデンス症候群(crowned dens syndrome)」(偽痛風が原因で起こる頭痛)が疑われる場合
首の上の方(上部頚椎)までしっかりと撮影できるようにMRIの範囲を広げて、関節の周囲に炎症や腫れがあるかを確認します。
また、いわゆる「一次性頭痛(特定の原因が見つからない頭痛)」でも、画像検査が役立つケースがあります。

●低髄圧症(ていずいあつしょう)
→ 横になると楽になり、起き上がると悪化する頭痛
→ 髄膜(脳を包む膜)が厚くなっている様子を見るため、Flair(フレア)という特殊な撮影方法で、複数の角度からMRIを撮影します。

●可逆性脳血管攣縮症候群(かぎゃくせいのうけっかんれんしゅくしょうこうぐん)
→ 突然の激しい頭痛が特徴
→ 最初の発作から数日後に血管が一時的に細くなることがあるため、数日後に再度MRIを撮影して確認します。

●後頭神経痛・緊張型頭痛
→ 首や後頭部の筋肉の緊張(ストレートネック・肩こりなど)によって起こる頭痛
→ この場合は頭だけでなく首(頚椎)のMRIも撮影して、隠れた異常がないかを調べます。

●副鼻腔炎(ふくびくうえん)による頭痛
→ 鼻の奥の空洞(副鼻腔)のうち、蝶形骨洞や前頭洞に炎症があると頭痛の原因になることがあり、それに応じた部位を詳しくMRIで撮影します。
(※なお、上顎洞の炎症では通常は頭痛は起きません)

このように、頭痛の背景にあるさまざまな疾患を見極めるには、疑われる原因に応じて「どこを・どの方法で」検査するかをきちんと選ぶことが重要です。

一人ひとり異なる
頭痛の“治し方”


最近では、頭痛の治療法も進化してきました。
これまでのように「痛くなったら薬を飲む」のではなく、「痛くならないように予防する」ことが、今のスタンダードな治し方となっています。

たとえば、内服薬のタイミングを管理できるアプリを使ったり、症状が出そうな時期に合わせて注射薬を接種したりと、予防法はさまざまです。

中でも、片頭痛や群発頭痛のように日常生活に大きな支障が出るタイプの頭痛では、必要な治療をしっかり受けることが重要です。
ただし、以下のような注意点もあります。

 □毎月1万円以上かかる「CGRP抗体製剤」のように、経済的な負担が大きい治療もあります。
  (保険の種類によっては補助が出ることもあります)
 □若い女性では、妊娠時に胎児への影響が考えられる「バルプロ酸」という薬は慎重に使う必要があります。
 □血圧が低めの方に、カルシウム拮抗薬やβ遮断薬などの予防薬を安易に使うことも避けるべきです。

このように、頭痛の治療は「その人に合った方法」を選ぶことが大切です。
生活スタイルや体調、ライフステージに応じて、医師と相談しながら最適な治療を一緒に見つけていきましょう。

「この痛みの正体を知りたい」
そう思ったら、神経内科専門医へ


現代を生きる人が避けては通れないストレスや寝不足、生活リズムの乱れといった日常の要因が、頭痛やめまい、しびれといった症状の背景にあることもあります。

神経内科では、こうした“からだとこころのつながり”にも目を向けながら、診断と治療を進めていきます。

「最近仕事が忙しくなって頭痛の頻度が増えた」(転職や異動を契機とした頭痛)
「突発的な頭痛や、ふわっとしためまい、手足のしびれが気になる」
「薬を飲んでるけど効きにくくなってきた、または効かない」

こんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。

自分の頭痛についてよく知り、どう対処すればよいかを身につけていくことで、頭痛は少しずつコントロールできるようになります。
そうすることで、毎日の暮らしもぐっと楽になりますよ。

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